歩行アニメーションの作成
キャラクターアニメーションの基本「Walk cycle」を作成してみましょう。
アニメーションのイメージ
歩きのアニメーションはシンプルなようで実はとても難しいアニメーションです。
↑のポージングの内容でも説明しましたが、歩きは特にそのキャラクターの年齢や性格が如実に現れる動きになりますので、どんな歩きのアニメーションを作るのかをしっかりとイメージしておきましょう。
今回作成する歩きのイメージは、中肉中背の成人男性がリラックスした状態で少しゆっくり歩いているイメージで作成していこうと思います。
キーポーズの作成
MAYA設定と開始フレームは下記で始めます。
まずは基礎となるキーポーズを作成していきます。
歩くという行為は、地面を蹴って上体を前に倒そうとしたものをもう片方の足で受け止めるという動作の繰り返しです。
手足を動かすだけの動きにならないように注意して動きを作成していきましょう!
足の運びを作成
今回はアニメーション初心者でもわかりやすく進められるように、人体を各パーツに分けて作業を進めていきます。まずは足部分から作成していきましょう。
足のポーズを作成する際に使うコントローラーは以下の5つです。
「Left(Right)_IKKnee_anim」→膝の向きを調整。
「Left(Right)_IKFoot_anim」→足のZ方向の前後の動きを主に作成。
「Left(Right)_IKHeel_pivot」→足を踏み込む時のつま先を上げる動きを作成。
「Left(Right)_IKToeBase_pivot_anim」→つま先で踏ん張るポーズを作成。
「Left(Right)_IKToe_pivot_anim」→つま先が地面から離れた時の足首の角度を作成。
体の上下は「Waist_ctrl」の「Translate Y」を使用します。※今回はその場歩きなので、「Translate Z」は使用しません。
足のキーポーズ作成
以下のフレームでそれぞれキーポーズを作成していきます。
1Fと33Fは同一ポーズです。17Fが丁度1Fの左右反対ポーズです。※画像クリックで拡大できます。
1F(17F、33F)
左足を前に、右足を後ろに移動し、腰から足先までが三角形になるようなシルエットを作成します。
左足は踵を前に出してつま先は上げた状態、右足は踵を少し上げたつま先立ちのような状態にします。
男性の歩きを作成しますので、前に出した足先と膝は真っすぐではなくやや外側を向くようにします。後ろ足も同様、前後に真っすぐではなく少し外側に回転させるようにします。
5F(21F)
左足は地面にしっかりと足をつけて、右足はつま先がちょうど地面から離れる瞬間のポーズです。
頭の位置は1フレーム目より下になります。ここのポーズがwalkcycleの中で一番頭の位置が低いポーズになります。
9F(25F)
9フレーム目に踏み込んだ足と腰が丁度真っすぐになるポーズを作成します。この時頭の位置は1,17,33Fよりも高い位置に持っていきます。
この時頭の位置は1,17,33Fよりも高い位置に持っていきます。
13F(29F)
足を踏み込んだ後、その足を軸に上体を前へ運ぶためのポーズです。左足はややつま先立ちの状態で、右足は前に出してますが、膝はまだ曲がっているようにします。
9Fのポーズよりも頭の位置は高くなります。
ここまでで再生してみると以下のような感じです。
Walk cycleを作成しやすくするためにループの設定を行いましょう!
グラフエディタの「View」→「Infinity」にチェックマークを付けます。
同じくグラフエディタの「Curves」→「Pre Infinity」→「Cycle with Offset」を選択します。
今度はグラフエディタの「Curves」→「Post Infinity」→「Cycle with Offset」を選択します。
するとキーを作成した後、キーを作成する前も(キーが打たれてなくても)同じようにループされるようになります。
上体と重心の作成
次に体の腰から上体の部分を作成していきます。キーポーズを作成したそれぞれのフレームでどこに重心があるのかを考えながら作成していきましょう。
上体の動きは以下のコントローラーを使用します。
腰の動きは「Hip_Ctrl」を使用して作成します。
1F(17F、33F)
フロントビューから見た時、腰は左足の方向へ少し傾けるようにします。同時に肩は逆方向に少し傾けます。
重心は踏み込んだ軸足から片足へ移っている途中なので中間地点。
サイドビューから見た時、腰のひねりと上半身のひねりも加えます。腰は足を出した方向へ回転させ、上半身は腰とは逆方向へ回転させます。この時体は真っすぐの状態ではなく、前に少し傾くようにします。
17Fに1Fの反対ポーズを作成し、33Fに1Fと同様ポーズを作成します。
5F(21F)
体重が最も踏み込んで片足に掛かっている状態です。全体的な傾きやひねりが1Fよりも大きくなります。
重心は踏み込んだ足に移動します。
9F(25F)
後ろの足を前へ運ぶ丁度片足立ちのようなポーズ。
重心はまだ軸足にかかっています。
サイドビューから見た時、今回は上体が少し弓なりになるようにしています。(上体を前に押し出す時のちょっとしたアンティシペイションを意識しています)
13F(29F)
片足を持ち上げているフレームです。傾きは9Fと17Fの中間くらいになります。
重心はこのポーズまで軸足側にかかっています。
ここまでで再生してみると以下のような感じです。
腕の振りを追加
足と体の動きを作成したので、次は腕の振りを追加していきます。腕の振りは足とは反対方向(ひねるような感じ)になります。※画像クリックで拡大できます。
注意点としては前に腕を振る際、肩も腕の方向へ少し回転させるようにします。
また、上から見た時に手の振りは真っすぐではなく多少「V字」に近い形にしています。
ここまでで再生してみると以下のような感じです。
ここからポリッシュ作業(細かい部分の調整)をしていきます。
ポリッシュ作業
各パーツ毎にタイミング調整や、全体の動きを意識したオーバーラッピングアクション、フォロースルーなどの動きを加えていきます。
足の運びの調整
ポリッシュ作業も足部分から調整していきます。左右の足の踏み込みのタイミング、スペーシングの調整などを行います。
↓足の運びポリッシュ前。膝のカクツキや、足の運びのタイミングが少し単調な感じがあります。
最も注意すべきことは、膝、足部分のArcsの乱れや、IK特有の伸びきりなどの調整です。
「Left(Right)_IKKnee_anim」→膝の向きを調整。
「Left(Right)_IKFoot_anim」→足のZ方向の前後の動きを主に作成。
「Left(Right)_IKHeel_pivot」→足を踏み込む時のつま先を上げる動きを作成。
「Left(Right)_IKToeBase_pivot_anim」→つま先で踏ん張るポーズを作成。
「Left(Right)_IKToe_pivot_anim」→つま先が地面から離れた時の足首の角度を作成。
↑のコントローラーを使用しながら細かく調整を行います。
↓足の運びをポリッシュしたもの。
上半身、頭の調整
腰から上半身にかけて力の伝達を意識してオーバーラッピングアクションを作成します。
この時動きが大きくなり過ぎないように注意してください。
体が大きく動いている時に頭がビタ止まりだと不自然なので、上半身の動きにオーバーラッピングを意識して揺れを少し追加します。
フロントビューから見た時の横揺れ。
サイドビューから見た時の縦揺れ。
↓上半身、頭のポリッシュを行ったアニメーション。
腕の調整
最後に腕の振りを調整していきます。
腕のアニメーションは特にオーバーラッピングアクション、フォロースルーを意識して、腕→肘→手の順番で力の伝達を感じられるように調整を行います。
完成したアニメーションが以下になります。