カメラとレンズ
カメラが被写体を写す原理
私たちが写真や映像を観るとき、それはカメラのレンズを通した世界を観ています。レンズはおおまかにいうと光の屈折を利用して被写体を写し出しています。
- 光の取り込み
- レンズを通して光がカメラに入ります。レンズは光を集めて焦点を合わせる役割を果たします。
- 絞りとシャッター
- 絞り(アパーチャ)は、カメラに入る光の量を調整します。シャッターは、光がイメージセンサーに当たる時間を制御します。
- イメージセンサー
- デジタルカメラではイメージセンサー(CCDまたはCMOSセンサー)が光を電気信号に変換し画像を生成します。
センサーサイズ
センサーサイズとは、カメラのイメージセンサーの物理的な大きさを指します。イメージセンサーはレンズを通して入ってくる光を電気信号に変換し、画像を生成する部品です。センサーサイズは写真の画質や被写界深度に大きな影響を与えます。(一般的にはサイズが大きいほど画質が良くなります)
主なセンサーサイズには以下のようなものがあります
- フルサイズ(35mm)
- 一眼レフカメラや高級ミラーレスカメラに多く搭載されています。
- 大きなセンサーサイズにより高い画質と広いダイナミックレンジを提供します。
- 被写界深度が浅く背景をぼかしやすいです。
- APS-C
- 多くのミラーレスカメラや一眼レフカメラに使用されています。
- フルサイズよりも小さいですが十分な画質を提供します。
- 被写界深度はフルサイズよりも深くなります。
- マイクロフォーサーズ
- オリンパスやパナソニックのカメラに多く見られます。
- APS-Cよりもさらに小さいですがコンパクトなカメラボディを実現できます。
- 被写界深度が深く全体をシャープに写すことができます。
センサーサイズが大きいほどより多くの光を取り込むことができ低照度環境でもノイズが少なく高画質な写真を撮影できます。また、センサーサイズが大きいほど背景をぼかす効果が強くなります。
被写界深度
次に「被写界深度」について説明していきます。被写界深度とは、レンズのピントが合う範囲のことです。
被写界深度が深いと前景から背景まで広い範囲がシャープに見え、浅いと特定の部分だけがシャープに見え他の部分はぼけて見えます。
被写界深度に影響を与える主な要素は以下の通りです。
- 絞り(F値): 絞りを開ける(F値を小さくする)と被写界深度が浅くなり、絞りを絞る(F値を大きくする)と被写界深度が深くなります。
- 焦点距離: 焦点距離が長い(望遠レンズ)ほど被写界深度が浅くなり、短い(広角レンズ)ほど深くなります。
- 撮影距離: 被写体に近づくほど被写界深度が浅くなり、遠ざかるほど深くなります。
- センサーサイズ: センサーサイズが大きいほど被写界深度が浅くなります。
絞り(アパーチャー)
絞り(アパーチャー)は、カメラレンズ内の開口部の大きさを調整する機構です。
写真の明るさや被写界深度に影響を与えます。絞りの大きさはF値(またはFストップ)で表されます。
- F値と絞りの関係
- 小さいF値(例:F1.8): 絞りが大きく開いている状態。より多くの光がセンサーに届きます。被写界深度が浅くなり、特定の被写体を際立たせることができます。
- 大きいF値(例:F16): 絞りが小さく絞られている状態。センサーに届く光の量は減ります。被写界深度が深くなり、全体をシャープに写すことができます。
- 光の量の調整
- 絞りを開けると(小さいF値)多くの光がカメラに入るため、暗い環境での撮影に適しています。
- 絞りを絞ると(大きいF値)光の量が減るため、明るい環境での撮影や長時間露光に適しています。
焦点距離
レンズには焦点距離というものがあり、この距離が長いのか短いのかによって被写体の見え方が大きく変わります。
焦点距離は、レンズの中心からイメージセンサー(またはフィルム)までの距離を指します。焦点距離はミリメートル(mm)で表され、レンズの視野角や被写体の大きさに影響を与えます。
望遠レンズ
望遠レンズは遠くの被写体を拡大して写すことができるレンズです。100mm以上のレンズが一般的に望遠レンズと呼ばれます。
望遠レンズの特徴
- 背景のぼかし: 望遠レンズは被写界深度が浅いため、背景を美しくぼかすことができます。これにより被写体を際立たせることができます。
- 圧縮効果: 望遠レンズは遠近感を圧縮する効果があります。これにより被写体同士の距離が近く見えるようになります。
広角レンズ
広角レンズは、通常のレンズよりも広い視野を提供するカメラレンズです。これにより、より広範囲のシーンを一度に撮影することができます。
広角レンズの特徴
- 広い視野角: 広角レンズは通常のレンズよりも広い視野角を持っており、多くの情報を伝えることができます。
- 被写体の強調: 近くの被写体を強調し遠くの背景を引き立てる効果があります。これにより映像に奥行き感を与えることができます。被写体間の距離が誇張される。
- 歪み: 焦点距離が短すぎると、特にフレーム付近で歪みが生じます。
標準レンズ
一般的に人間の目に近い距離感のレンズとして扱われることが多いです。
MAYAの場合、デフォルトのセンサーサイズ(イメージセンサーの大きさ)は35mmなので、標準レンズの焦点距離(Focal Length)の値は40~50mmくらいです。
望遠、広角レンズとは違い被写体同士の距離感の誇張はありません。
焦点距離の違いによる印象の違い
上の画像は120mmのレンズを使用し、ボールをカメラの中央に捉え撮影したものです。情報量としてはボールが土台のようなものの上に乗っているということがわかるのみです。
こちらの画像は、カメラは全く動かさず同じ位置で50mmのレンズを使用して撮影したものです。
視野が広がり、この空間にはボールが複数存在することがわかりました。また、土台のようなものは柱であることも認識できます。
レンズ焦点距離が短くなると視野が広がり、長くなると視野が狭くなっていくのがわかると思います。
それでは更に短いレンズを使用してみましょう。今度は20mmで撮影した画像です。こちらもカメラの位置、オブジェクトの位置は移動していません。
視野が非常に広がったのが確認できます。
ここで手前左下のボールに注目して下さい。ボールの形が歪んでいるのがお分かりでしょうか。
よく見ると奥の背景のグリッドも歪んでいるようです。
短いレンズの特徴の、カメラに近い位置に写る物体が歪んで見えてしまう現象です。
逆に1枚目の画像のように、焦点距離の長いレンズで撮影すると物体がフラットに見えるという特徴があります。
この特徴を利用して、セルルックアニメーションなどの現場ではセルアニメに寄せるためにキャラクターには短いレンズを使用してパース感を出し、歪ませたくない背景などは焦点距離の長いレンズを使用してコンポジットの際に合成したりなどしている場合もあります。